中学卒業式後、高校合格発表当日−……


合格発表を確認したら合格、不合格どちらであっても職員室へ報告にくること。
そう言った担任の言い付け通り中学へとやってきた祥子と大悟は担任に合格の報告を終えてからかれこれ二時間、生徒玄関に座っていた。

「芹沢おっせーな。落ちたのかな」

隣で大悟が呟く。

「後来てないの芹沢だけって言ってたよね、担任」

芹沢を待とうと言い出したのは大悟だった。

これは多分祥子の推測だけれど、大悟は祥子が芹沢を特別気にしていることに気がついている。

それでも何も言わないのは大悟が優しいからで、その優しさに胡座をかいている祥子はきっと最低なのだと思う。

4月から祥子と大悟は別々の高校へ通う。

だからケジメをつけるなら今が1番良い。

「あのさ、大悟」

「ん?」

「私たち、4月から高校別じゃん?今までみたいに毎日会うのって多分家が隣でも難しくなると思うんだよね」

「……ああ。そだな」

大悟は首を捻って不思議そうに祥子の顔を覗き込む。

祥子は大悟のこういう天然で邪気のない仕種が苦手だ。

主人を疑わない忠犬のようで、罪悪感が増す。