玄関の扉の開く音で誰かが入って来たのがわかった。父もそちらに視線を向ける。
母の声がしたかと思うとすぐにリビングの扉が開かれた。
「ハジメいるの?お客サンちゃん……と」
母の声が途切れる。
母はコーヒーを飲みながらくつろいでいる父の姿を見るなり固まった。
「……よお」
「アナタ……」
一は振り返って廊下を見た。母が誰かと話していたような気がして立ち上がる。
「アナタ、帰っテ来てくれタの?」
扉口に立ち塞がる母は一が押すとふらりと父の方へ歩み寄った。
一はそのまま廊下に顔を出す。
「ハジメく、」
驚いた。
部屋に隠れているはずだった樹里が靴を抱えて階段に座り込んでいた。
「なん、で」
一の問いかけにも答えられず樹里は座ったまま首を横に振った。
廊下に出て樹里を立ち上がらせる。
「先生」
「もう、帰るね」
樹里は俯いて一の胸を押しのけると慌てたように靴を履いて外に出て行った。
一もそれを追い掛けて外に出る。
樹里の車はアパートの前の道に寄せて停められたままで、車に乗り込む樹里を引き止めるように腕を引く。
「もしかして話聞いてた?」
樹里の顔を隠すように垂れる髪の毛を反対の手でかきあげてやると、ようやく目が合った。
「俺行かないから。どこにも」
樹里は小さく頷くと車のドアを閉めた。
母の声がしたかと思うとすぐにリビングの扉が開かれた。
「ハジメいるの?お客サンちゃん……と」
母の声が途切れる。
母はコーヒーを飲みながらくつろいでいる父の姿を見るなり固まった。
「……よお」
「アナタ……」
一は振り返って廊下を見た。母が誰かと話していたような気がして立ち上がる。
「アナタ、帰っテ来てくれタの?」
扉口に立ち塞がる母は一が押すとふらりと父の方へ歩み寄った。
一はそのまま廊下に顔を出す。
「ハジメく、」
驚いた。
部屋に隠れているはずだった樹里が靴を抱えて階段に座り込んでいた。
「なん、で」
一の問いかけにも答えられず樹里は座ったまま首を横に振った。
廊下に出て樹里を立ち上がらせる。
「先生」
「もう、帰るね」
樹里は俯いて一の胸を押しのけると慌てたように靴を履いて外に出て行った。
一もそれを追い掛けて外に出る。
樹里の車はアパートの前の道に寄せて停められたままで、車に乗り込む樹里を引き止めるように腕を引く。
「もしかして話聞いてた?」
樹里の顔を隠すように垂れる髪の毛を反対の手でかきあげてやると、ようやく目が合った。
「俺行かないから。どこにも」
樹里は小さく頷くと車のドアを閉めた。