キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~



「告げ口だって、結局角が立ちますよ。それに、受け流すも何も、もうあっちは私のこと完全に無視ですもん」


矢崎店長が私のことを気にかけてくれていることは嬉しいけど、せっかく二人でいるのに、平尾さんの顔なんか思い出したくなかった……。


「まあ、嫌だろうけど……今のうちに歩みよっておけよ」

「えっ?」


今のうちって、どういうこと?

じっと見つめると、店長はさらっと重大事項を口にした。


「平尾さん、クビになるから」

「ええっ!?」


クビって、なんで?まさか、売上改ざんが原因で?


「お前のせいじゃない。全国的に人件費を減らそうということで、売上成績の悪いパートや派遣、契約社員が一斉に切られることになった」

「それ、本社で聞いてきたんですか?」


たずねると、うなずく店長。

そもそも前のお店が閉店したのも、売上が低迷したのが原因だった。

何年か前の未曾有の大不況から少しずつ持ち直してきたけれど、そのときの赤字がまだ解消できていない会社は、焦って閉店やリストラという安易な手法で採算を取ろうとしているらしい。


「杉田さんは切られることはないと思うけど、平尾さんは確実だろう。変な逆恨みされる前に、仲良くしておけ」


無理ですって~!私が何かするより先に、あっちが私を避けてるんだもん。

まあ、必要以上に冷たい態度をとらないように、気をつけてはみるけどさ。

正直、彼女が辞めさせられると聞いて、気の毒だとは思うけど、寂しいとは思わない。麻耶ちゃんがいなくなったときは、涙が出そうだったけど。

ドライと言われてもかまわない。女同士なんて、こんなものよ。

適当にうなずいておいて、私はデザートのチーズケーキにフォークを刺した。