「なんですか?」
手のひらに乗るほんの小さな紙袋には、有名な駅内売店のシール。
それを剥がしてみると、中から小さなストラップが出てきた。
そういえば、本社は愛知だったっけ。
エビフライに乗った、ゆるい顔のクマがのほほんとこちらを見ていた。
「あら、愛知限定」
「そ。ひとつしかないから、平尾さんに言うなよ」
ってことは……私にだけ特別に、買ってきてくれたということ?
そう思えば、もうスマホにつけている人もだいぶ少なくなってきたご当地ストラップが、突然愛しく思えてきた。
店長が、私のためだけに……。
「ありがとうございます。可愛いです」
思わず、にへらと頬が緩んでしまった。
このビニールははがさないで、家に大事にしまっておこうっと。
バッグにそれをしまって顔をあげた瞬間、矢崎店長が微笑んでいるように見えた。
けれどそれは気のせいだったのか、店長はいつもの表情で私に聞く。
「俺がいない間、店はどうだった?」
「ああ……ええと、杉田さんは以前のように、真面目に働いてくれていました。平尾さんとは、何も話していない状態で」
「ああそう。やっぱり」
店長はフォークを置いて、私を見る。
「この前は笑っちまったけど、お前も社会人だから、受け流せるところは受け流して、なるべく円滑にやっていけよ。どうしても許せないことは、俺に言え。ガツンと言ってやるから。お前が直接言うと、角が立つからな」



