翌日。
私は指定されたモールの入口近くのコーヒーショップで、生クリームたっぷりのコーヒーを飲んでいた。
遅刻してはいけないと思うあまり、早く着きすぎちゃった。
緊張で胸が痛いし、汗が半端ない。
喉もカラカラで、コーヒーはいつの間にか氷だけになってしまっていた。
鏡を取り出し、もう何度目になるかわからないみだしなみチェックを終えると、ふうと息をついた。
「おや?」
ふと前の方の席のお客さんが目に入る。
ショートカットにメガネの、地味だけどなんとなく可愛い子。
「麻耶ちゃん?」
そっと立ち上がり、声をかけてみる。
すると相手は、こちらを見て目を丸くしたあと、にこっと笑った。
「はっちゃん!久しぶりだね!」
「やっぱり麻耶ちゃんだ!似た人がいるなあと思ったの」
麻耶ちゃんはとにかく、と自分の横の席を開けてくれた。
彼女は、前のお店にいたパートさんの麻耶ちゃん。
お店の閉店が決まると同時に、実質解雇になってしまった、気の毒なパートさんだった。
私と同じでやる気はあまりないようだったけど、必要なことは真面目にしていたし、話しやすくて仲も良かったのに、麻耶ちゃんが辞めてしまって、それきりになっていた。
「連絡できなくてごめんね。スマホが不慮の事故で壊れちゃって、バックアップもしてなかったから」
「そうだったの。ところで……」
向かいの席に、ちらりと視線を送る。
そこには、麻耶ちゃんの連れとみられる、少し年上っぽい男の人が。



