そう言って、店長は書類を平尾さんの目の前に突き出す。
ここからじゃ見えないけど、売上ってことは、従業員別の成績表か何か?
「俺の休みの日のハツの売り上げを、自分の従業員コードで入力していますよね。それがすぐにはばれないように、原本のカードと、照会画面の名前はハツのままで」
え……なにそれ!
私の売上を、自分の成績にしちゃってるってこと?ひどすぎない?
「今後、こういうことはいっさいやめてください。では、解散」
青い顔の二人を残し、店長が加工台の方へ戻ってくる。
長井くんは呆れた顔で、「観念して仕事しましょうね」と励ましだかなんだかわからない言葉を二人にかけていた。
いけない。このままじゃ、みんなに見つかっちゃう。それは気まずすぎる。
逃げるように加工台から裏口へ向かおうとしたのに。
「……ハツ?」
矢崎店長の声がした。と思ったら、ぐいと腕を引っ張られる。
あっという間に裏口からお店の外に出されて、見上げた店長の髪が日に透けて茶色に光った。
「あ、あの、水筒を忘れて……」
「見てたのか」
「は、はい……」
顔が火照っていくのがわかる。
矢崎店長はぱっと私の手を離すと、気まずそうに首の後ろをかいた。
「……ああ、そう」
「……ありがとう、ございました……」
ぺこりと頭を下げると、店長の頬も少し赤く染まったような気がした。



