「……俺が言いたいことがわかるよな?」
「え、ええと……」
「ここで全部ぶっちゃけるつもりはない。けれど、もう一度よく考えてみろ。自分がしたことが、相手にどれほどの不快感を与えたか」
「は……」
「同じようなことをしたり、報復するようなことがあったら、俺はあなたを絶対に許さない。とにかく、ご自分でよく反省してください。今後も真面目に働いてくれるようであれば、上にこの話を通したりするつもりはありませんから」
いつもの敬語に戻った矢崎店長に、杉田さんはただうつむいて小さくうなずいた。
矢崎店長が私のために、あんなに怒ってくれるなんて……。
胸が異常なほど熱くなって、泣いてしまいそう。
「平尾さん」
名前を呼ばれ、ドキッとした様子の平尾さんは、青い顔で肩を震わせた。
「今更積極的に接客をしろなんて言うつもりはありません。ただ、働いている従業員の邪魔はしないように」
「邪魔なんて……」
「営業中の私語は、慎むように」
反論は許さないと言うように、ぴしりと言い放つ。
そして、販売情報を書いたお客様カードの束と、パソコンで出したと思われる書類をカウンターの上に放った。
平尾さんの目が丸くなる。
「そして、売上入力は長井にすべて任せます。あなたは、パソコンを触らないように」
「ど、どうして……」
「数字を見ればわかります。あなたの売り上げが、月にこんなにあるわけないんだ」



