「問題って……僕が何をするって言うんですか」
「問題を起こすなら、あの子。はっちゃんでしょう」
突然自分の名前を出されて、どきりとする。
そりゃあ私はまだ、店長のフォローがなければ一人前に動けないへっぽこ社員だけど……。
「一生懸命やってミスをするなら、俺はハツじゃなくても、誰も責めたりしません」
店長はきっぱりと言う。
「だけど、俺がいない間に、他の社員に卑怯な嫌がらせをするようであれば、そんな従業員はいらない。俺の店から消えてもらう」
突然変わった店長の口調に、店の空気がぴんとはりつめる。
「はっちゃんが何か言ったんですか。僕はただ、普通に話しかけただけですよ。早く店に馴染んでもらおうと思って、少しスキンシップを……」
セクハラをしたのかと聞かれてもいないのに、杉田さんは勝手に弁解し始めた。
『卑怯な嫌がらせ』と言われた時点で、私が店長に訴えたと察したんだろう。
「ああ!?」
──バアン!!
大きな音がして、びくりと肩が震えた。
店長が、持っていたファイルをカウンターに叩きつけたんだ。
こちらからだと横顔しか見えないけれど、そうとう怒っているみたい。
眉も目も吊り上げて、矢崎店長は杉田さんをにらんだ。
文字通り、鬼の形相で。



