泣きそうになったけど、悪いのは私だ。誰のせいにもできない。
私は割ってしまったレンズを持って走っていき、お客様に平謝りした。
お客様は迷惑そうな顔をしたけれど、レンズの無料交換であっさりと承諾してくれた。
「またこなきゃいけないんだね」
「申し訳ございません。出来上がり次第、ご連絡いたします」
頭を下げていると、急いで近い度数のプラスチックレンズを入れてくれたメガネを、矢崎店長が持ってきてくれた。
「大変申し訳ございませんでした。もし御足労いただくのがご面倒でしたら、私がご自宅までお届けいたしますが」
「来られるの?」
「もちろん、お伺いさせていただきます」
「んー……まあいいや。俺が来るよ。家にこんないい男が来たら、嫁さんが緊張しちゃうしね。ちゃんと直してくれるなら、それでいいから」
お客様はそう言って、笑顔で……とはとても言えないけど、私に気を遣ってくれたのか、怒りを露わにせずに帰っていった。
ああ、やっちゃった……。最低だ……。
「ハツ」
「はいっ」
「休憩」
「え……」
休憩に行けってこと?でもまだ、11時前……。
「いいから、行って来い」
きっともう、お店にいるなという意味だ。
冷たく突き放すような矢崎店長の声がショックで、私はその辺にトレーを置くと、なにかから逃げるように2階に駆け上がった。



