昼休憩を終えて、浮かない気分で一階に戻る。
すると入れ替わりに、長井くんが休憩に出ていく。
今日も近くのコンビニにお弁当を買いに行くのかな。
ちょうどお昼過ぎのこの時間は、お客様も少ない。
午前中の分のレンズ注文と売上入力をしようと、お店のパソコンの前に座った。
すると、ふっと悪戯心が芽生える。
「や・ざ・き……」
私は杉田さんがこっちを見ていないことを確認しながら、『お客様照会画面』でぽちぽちと店長の名前を入力する。
ここに情報を入力すれば、全国の顧客のデータが見られる。
今まで買ってくれたフレームやレンズの種類、検眼データなどだ。
「矢崎俊(しゅん)、30歳、男」
住所はここの寮の住所になっている。
そういえば、寮に入ってるってことは、実家がここから遠くにあるってことだよね。
どこらへんに住んでいたんだろう?実家の話なんか全く聞いたことない。
「知らないことばかりだなあ……」
フレームやレンズのデータを見ても仕方がないので、私はすぐにその画面を閉じた。
すると、こつこつとこちらに近づいてくる靴音がした。
「はっちゃんどうしたの、疲れた顔して」
杉田さんだ。
返事をしようとすると、なぜか彼は私の背後に回った。
そして、おもむろに私の両肩をがしっとつかむ。
え?なにこれ?なんで?



