「その後、ストレートに告白しても断られちゃったんだって。平尾さんとランチしたとき、散々愚痴ったらしいよ」
結局、失恋のショックで、嫌いな仕事を無理して続ける気力が全部なくなって、『お見合い結婚する!』と言い残して辞めていったらしい。
「平尾さんは似た者同士、仲が良かったから菜穂さんに同情的だけど、俺たち男からしたらあまりいい印象なかったな」
そうなんだ……。
「店長も振り回されて、相当疲れたみたいでさ。俺に一度だけ愚痴ったんだよ。『だからやる気のない女性社員は嫌なんだ』って」
ずきんと、胸が痛んだ。
それって、私もきっと同じだ。
やる気のない、いつか結婚して退社する気まんまんの女性社員なんかに好意を寄せられても、きっと迷惑なだけ。
……って、私今、何を考えて……。
かたん、と如雨露がシンクに落ちて、口から水が溢れだす。
「ああ、ごめん……長井くん、濡れなかった?」
ポケットからハンカチを出すけど、長井くんは水のことなんか気にしていないみたい。
その顔は笑っていなくて、じっと私を見つめていた。
「はっちゃん……もしかして」
「え?」
「矢崎店長のこと──」
──コンコン。
最後まで聞く前に、物置部屋の戸が叩かれた。



