キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~



「はっちゃんが来る前、ここにいた女性社員のことなんだけどさ」


うちのチェーン店は、ほとんど男性社員2、3人と女性社員1人、パートさん2、3人で構成されている。

その人の代わりに、私はここへ異動させられたんだ。


「店長と同期の大久保菜穂さん。まあ綺麗だったけど、仕事はやる気0でさ。平尾さんと同じ感じ。扱いにくい人だった」

「へえ……なんで辞めちゃったの?」

「それがね……」


長井くんが、一瞬話してもいいものかどうか、迷うように視線を泳がせた。


「辞めちゃった人の話だからいいか。菜穂さんはね、矢崎店長の事が好きだったんだ。誰の目から見ても明らかだったんだけど……」


ちくりと胸が痛んだ。

その先を聞くのが、怖いような気がした。


「菜穂さん、30になって突然、辞めるって言いだしたんだよ。今から思えば、店長に引き留めてほしかったんだろうね。でも店長は、『じゃあ、地区長に言っておく』ってあっさり辞表を受け取っちゃったわけ」

「あらら……」


ちょっと同情してしまう。

好きな人にちょっとでも引き留めてもらえないなんて、そりゃあ寂しいだろう。

でも男の人ってけっこう鈍感で、そんな微妙な乙女心に気づけないのが現実のような気がするけど。