「これならどうでしょう」
「あら、すっきり」
「歪みがだいぶ少なくなりますよね」
高いレンズはそれなりに作りが良くなっているので、歪みが抑えられていて、視界が広く見える。
実はこのレンズ、薄型だと両目で8万円弱。
昔はこのテストレンズをお客様に見せることもしなかった。
買ってもらえる自信がなかったからだ。
そして、高いものを買ってもらって、あとで「見えにくい」などのクレームが発生するのが恐ろしかったから。
「そりゃあ、こっちの方がいいわよねえ……」
お客様に違いを納得してもらえれば、それでいい。
一度検眼室を出て、今度はフレーム選び。
女性にとっては、とても重要なところだ。
黄色い肌の人に青みがかったフレームをかけさせると、死人のような顔色になってしまう。
などという肌の色によって、綺麗に見える色が違うというのはもう常識だとおもうけど、フレームには形もある。
だいたい眉のカーブとフレームの上部のカーブが同じようなものを選んだ方が、顔がスッキリと見える。
縦の大きさは、眉からあごの長さの3分の1まで。
耳側が上がっていれば、頬も上がって見えるけど、少しきりりとした印象になるので、優しく見せたい人には注意が必要。
「あらあ、こんな素敵なのもあるのねえ……」
女性が目を止めたのは、レジの近くの接客カウンターの中にある、ピンクゴールドのフレームだった。



