「はっちゃん、検眼室ちょうど空いたから」
杉田さんが声をかけてくれる。
私はデータを持ち、お客様を検眼室へと案内した。
オートでだいたいの視力を計ってくれる機械で、お客様の目のデータをとる。
それはビジョンテスターと呼ばれる別の機械に転送され、その前にお客様に座ってもらい、検眼が始まる。
ビジョンテスターにおでこをつけてもらい、両目の前にあるレンズから、視標を見てもらう。
そして遠視、乱視、斜視を調べ終えたら、ビジョンテスターの出番は終わり。
出た度数を仮枠とよばれる検査用のメガネにテストレンズを入れて、お客様にかけてもらう。
その上から近くを見るための……簡単に言えば老眼鏡の度数を入れ、良く見えるようであれば、遠近両用のレンズに変える。
「これが一番普通のレンズです」
お客様に仮枠をつけたまま、立ち上がってもらう。
「地面が歪んで見えるわね。怖い」
「真下は見えないので、顔を下げ、少し先を見て歩いていただくようになります」
「横を見ても歪むのね」
それは、遠近両用というメガネは遠くを見る焦点から近くを見る点まで、少しづつ度数が変わっていくという作りになっているから。
真ん中の目線が通るところは良いけれど、横はどうしても歪みが生じてしまう。
私は一度仮枠を外してもらい、今のレンズを外した。
そして代わりに入れるのは、この店でも一番高いレンズのテストレンズだ。



