「でも、店長は嫌がっていたんです。三浦さんが、強引に……」
「もういいよ、初芽。何を言ったって、言い訳にしかならない」
代わりに私が弁護しようとしても、それすら止められてしまった。
俊は自白する殺人犯のように、深く頭を下げる。
「お二人が思っている通りです。俺は営業中に店を離れ、個人的に部下を寮に泊めました」
「店長……」
「椎名とは、少し前からつきあっています。今回こんなことになったのは、すべて俺の責任です。申し訳ありませんでした」
前に座っている二人は、謝罪を聞いて深いため息をつく。
「本社に報告するからな。せっかく専務が推してくれていたのに……北京行きはナシになるだろう」
「部長は甘いですよ。こんな人間が地区長昇進なんてもってのほか。店長から降格もありえるから、覚悟しておけ」
まだ冷静な部長に対し、地区長が感情的に俊をなじった。
そりゃあ、俊の不祥事の責任は地区長にも降りかかってくるんだろうけど……ひどい。
「あ、あの!」
気づけば、立ち上がっていた。
地区長と部長がこちらをにらむ。
「あの……お願いします。矢崎店長を、降格なんてしないでください」
「何を言ってるんだ」
「私が、甘えていたんです。私がどうしても泊めてって、頼んだんです」
思いつくままに嘘をつけば、隣の俊が私の腕をつかむ。
ふりむけば、「もうやめろ」と茶色の瞳が言っていた。
だけど。このままじゃ、俊が降格にされちゃう。



