「これは……どういうことでしょう」
「それはこっちが聞きたいよ。せっかく地区長に推してあげて、栄転も決まってたのに、こんな規則違反をするなんて。この画像は、本社のお偉いさん皆が知ってるんだ」
まさか……誰かがこんな写真を撮って本社に送ったっていうの?
その裏に隠れた悪意を感じて、ぞっとした。
嫌な汗がにじみ、心臓がばくばくと鳴る。
「矢崎くん、きみは部下を寮に泊めたのか?」
まるで取り調べをする刑事みたいな口調の地区長。
俊は画像を見て目を丸くしていたけど、一度まぶたを閉じ、深呼吸した。
そして、落ち着いた表情に戻り、こくりとうなずく。
「はい」
「あ、あの、この日は豪雨で、私が帰れなくなってしまったので……店長が仕方なく、泊めてくれたんです」
「仕方なく?じゃあこれはどういうことだ?」
部長は朝の写真を指さす。
私は言葉を詰まらせるしかなかった。
「電車やタクシーが使えなければ、矢崎くんが車で送ってやれば良かっただろう」
「できませんでした。飲酒をしていたので」
「なんだと?この日キミは出勤だっただろう?それでなぜ、飲酒なんかしていたんだ」
地区長がバンと机を叩く。その大きな音にビックリして、思わず肩が震えてしまった。
俊は、あの日あったことを淡々と二人に説明する。
「営業中に店を出て、フィリピンパブ。その後は若い部下を泊めて……いい御身分だな」
吐き捨てるような地区長のセリフに、俊は一言も反論しなかった。



