「いや、何か作ろうかと思いまして」
「作ってくれるのか?」
「と、思ったんですけど、材料が何も」
ちょっとでもお肉と野菜があれば、なんとかなったかもしれないのに。
「だよな。残念だ。手料理、食べ損ねた」
な、なによ可愛いじゃん。私の手料理、食べたかったってことじゃん。
俊は苦笑すると、冷凍庫を開ける。
そこにはチンするだけで食べられるパスタの袋がいくつか入っていた。
結局、その中から私はカルボナーラ、俊はミートソースを選び、それでは足りなかろうと、私の作ってきた鳥のから揚げが一緒にテーブルに並んだ。
「北京行きの準備、進んでる?」
パスタを食べている俊に聞くと、ふるふると首を横に振った。
「全然。何から手つけていいやら」
実家に挨拶に行ったその日から、俊は休日でなくても、たまに私の部屋を訪ねてくれた。
閉店後に待ち合わせ、食事をしてから、私の部屋で抱き合って、少し休んだら帰っていく。
休日は、俊の北京行きに必要そうなものをそろえようと買い物に行ったものの……今と同じようなセリフを言っていたような気がする。
「だよね……」
「本社での打ち合わせの時に、同じ立ち上げメンバーの社員に色々と聞いてみないとな」
さすがに海外で暮らしたことはないから、私にはなんのアドバイスもできない。
今度暇なときに、私も色々調べてみようっと。



