さて、電車が遅れているか調べようかな。
社内用ケータイを置いて、バッグから自分のスマホを取りだす。
多少遅れているかもしれないけど、なんとか動いてるよね。
「って、全線運転見合わせしてるじゃん!」
鉄道会社のページにアクセスしてみると、暴風波浪警報が出ているため、全線の運転を見合わせているという。
そんなあ。今朝の天気予報では、こんなこと全然言ってなかったのに。
菜穂さんの呪い?なわけはないか……。
これじゃ、バスも期待できない。動いていたとしても、どれも満車で、乗り込めないだろう。
はあ、とため息をついた瞬間、裏口のドアが開く音がした。
「初芽、まだいるか?」
「俊!うわ、ずぶ濡れじゃない」
俊は犬のように頭を振って、顔にまとわりつく水滴を払う。
そんな彼は、頭のてっぺんからつま先まで、ずぶ濡れだった。
「悪い、遅くなって。長井は?」
事情を話すと、俊は眉を下げ、困ったような顔をした。
「そうか。三浦のジジイ……あいついつも突然来て、俺を拉致して近くのフィリパブに連れて行くんだよ。一人じゃつまらんからとか、何とか言って」
「フィリパブ?」
「フィリピンパブ。どうにも長引きそうだから、色々理由をつけて抜けてきた」
なるほど、フィリピンの女の人たちに接客してもらうお店か。
社長さん、儲かってるのネー。



