20時。結局、二人とも閉店まで帰ってこなかった。
「どういうことよ……」
お客様も受け取りの方が2人みえただけで、大きなトラブルもなく営業を終えることができた。それは良かったけど。
店の外はまるで嵐。横殴りの雨が、透明の自動ドアに叩き付ける。
風もびゅうびゅう吹いていて、誰もいなくなった店を揺らした。
「これ、台風並じゃない?やばくない?」
いつ停電するかとびくびくしながら閉店作業をすべて終えると、社内用のケータイが鳴った。
「はい」
『あーはっちゃん?俺だけど。店長帰ってきた?』
長井くんだ。やけに遅かったけど、どうしたんだろう。
「ううん、まだ」
『マジか。ごめんね、こっちの店が忙しくて、どうしても手伝ってくれって泣きつかれちゃってさ。今からそっちに戻るから』
そっか、当日加工で一人は手がふさがっちゃうもんね。
長井くんが言うには、例のすぐにメガネがほしいお客様と、補聴器の調整(すごく時間がかかる)のお客様がかぶってしまったらしい。
「んー、もう片付けも施錠もできたから、大丈夫だよ」
『でも、一人なんでしょ。外すごい雨だよ。帰れる?』
……どうだろう。
外を見ると不安だけど、こんな視界の悪い日に、余分に車の運転をさせるのも悪いし。
「電車が止まってたら、タクシーを呼ぶから大丈夫。気をつけて帰ってね」
『そう……じゃあ、はっちゃんも気をつけて。お疲れ様』



