「んー……少しなら一人で店番できるから、行ってきて長井くん」
「ダメだよ。防犯の点でもアウトじゃん」
普通、強盗などがあるといけないので、店舗に女性社員を一人にすることはない。
でも、人が少ない店舗ではたまにあることだし……。
「きっとこんな雨の日は、悪い人も外に出たりしないって。店長もすぐに帰ってくるし、大丈夫だよ」
「でも、三浦さんはなかなか離してくれないって有名なんだよ」
「じゃあ長井くん、早く行って早く帰ってきて。お願い」
お客様もメガネが壊れて心細いだろうし。
さっさと移動伝票を書いてレンズを箱に入れて渡すと、長井くんはあきらめたようにため息をついた。
「もう……前なら絶対、『ひとりで店番なんてむ~り~』って言ったはずなのに。鬼彼氏の影響で変わっちゃったね、はっちゃん」
「ちょ、なにそれ」
「何でもない。行ってくるよ。何かあったらすぐに、店長か俺を呼んでね」
そう言い残し、長井くんも店を出ていく。
あとには、私だけがぽつんと残された。
雨は少しも弱くならず、ざんざんと音を立てて地上に降り注いでいる。
はあ……何もなければいいな。二人とも、早く帰ってきて……。



