飲みすぎ、遊びすぎのようで、顔がてっかてかしている。
髪もふさふさで、こんなに暗いのになぜかサングラス。
着こなすのが難しそうな幾何学模様のシャツを着たおじさんは、俊に親しげに話しかける。
「誰?」
「昔俺の上司だった人だよ。今は独立して、別のメガネ屋の社長さん」
俊は早口で言うと、カウンターの方へ出ていく。
「近くに寄ったからさ、顔を見ていこうと思って。相変わらず、いい男だな」
「それはどうも。三浦さんも元気そうですね」
「おう、まだまだ現役よ。ほら、着替えてこいよ。飲みに行くぞ」
三浦さんと呼ばれたその人は、豪快そうな笑顔で俊の肩を叩く。
飲みに行くって……まだ、6時だけど。
「いや、閉店までまだ2時間あるので」
「アホか。俺がおごってやるから。さっさと来いよ」
三浦さんは強引に俊の腕をつかみ、連れて行こうとする。
「ちょ、ちょっとだけ待ってください」
珍しく弱った様子の俊は、なんとか手を振り払ってこちらに近づいてきた。
「すまん、少し出てくる。あの人は言いだしたら聞かないんだ。お前は長井が電話を終えたら、帰っていいから」
「あ、はい……」
「すぐ戻ってくると長井に伝えてくれ」
「矢崎―!早くしろー!」
「はいはい!わかってますよ!」
じゃあ、と言い、俊はスーツのまま三浦さんと外に出ていってしまった。



