「あ、あの……」
「なに」
「こちらこそ、色々すみませんでした。お世話になりました」
初めは当たり障りなくつきあっていこうと思っていたのに、色々あって、いつの間にか大嫌いになっていた。
でも本当は、仲直りするきっかけを、ずっと探していたんだ……。
ぺこりと頭を下げてすぐ姿勢を直すと、平尾さんはムッとしたような赤い顔をしていた。
「……これからも頑張ってね」
それだけ言うと、彼女は車の中に戻っていく。
きっと、照れ臭いんだろう。
車の中で軽く手を振り、そのままコンビニの駐車場から出ていってしまった。
「はあ……」
涙は出ない。もう気まずい雰囲気に耐えなくて済む。
そうして少しホッとしているのに、なぜか寂しいのは……きっと、わだかまりが溶けたから。
こんな手紙をくれた平尾さん。
きっと、社内に悪い噂を振りまいたのは、彼女じゃないはずだ。そう思えた。
「入金、行こう」
気を取り直し、銀行への道を歩きだす。
すっとした心とは対称に、見上げた空はどんよりと曇りはじめていた。



