「私の父は冷凍食品会社をやっていて、中国にいくつも工場を持っているわ。私もあっちで過ごした時期があるの」
「それは初耳だ」
真面目に働かなくても、実家に帰れば良い暮らしができるってことだ。
だから、仕事をやる気がなかったのか。
「だから、言葉もできるし、現地での生活も色々とサポートできると思うの」
「……へえ」
「一緒に連れていくなら、何の後ろ盾もない、日本語しかできない、あの子よりずっとメリットがあるはずよ」
彼女は自分の胸元をドンとたたく。
「メリット、ねえ」
初芽は見るからに庶民の子で、店での敬語を聞くかぎり、日本語も少しあやしい。
中国に連れていくメリットはゼロで、むしろそんなことをすれば、初芽に精神的負担をかけるだけだろう。
まあ、いきなり強引に連れていく気もないのだけれど。
「俺に固執したり、結婚相談所に登録したりするより、お父さんに相手を紹介してもらった方が、お前にとってよっぽどメリットがありそうだけど?」
アドバイスしてやったつもりだが、それを聞いた大久保は顔を真っ赤にして怒りだした。
「私は嫌なの!生臭い、エビやイカのにおいのする家庭は、絶対に嫌なの!」
エビやイカ……ああ、そっちの冷凍食品か。
関連会社も水産系なわけだ。



