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昨日のこと。
「おはようございます」
体調不良で休んでいた平尾さんが出勤。
正直あてにはしていなかったが、初芽が応援で他店に行ってしまった今日は人が足りない。
こんなやつでも、いないよりはマシだと思い、俺はいつものように挨拶を返した。
その後長井が出勤してきて、通常通り営業時間が始まった。
今日はこの三人か。
初芽がいないと、途端に店の中から華やかさがなくなる。
寂しい……というよりも、何かが足りない。そんな感じだった。
明日は休みだし、メシでも誘ってみるか。
そんなことを思った後、客足が途切れた間に裏で書類を作成していると、突然業務連絡用の店の携帯が鳴った。地区長だ。
「はい、八幡店矢崎です」
『ああ矢崎くん。ちょうど良かった。実は、今日正式に辞令が出てね』
辞令。その単語を聞いた途端、体に緊張が走る。
『愛知じゃなくて、北京に行ってくれないかな』
「は……?」
地区長、今何て言った?俺の聞き間違いか?
『は?じゃなくて。北京支店の立ち上げリーダーとして、向こうに行ってくれって言ってるんだよ』
北京支店を作る計画があるのは知っていた。
だから、地区長試験の面接で中国語が出るなんていう噂もあり、徹夜で勉強をしたこともある。
けれど結局、面接で中国語なんて出なかったし、今までなんの話もなかったから、そっちの話は他のやつに回されたのだろうと思っていた。



