キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~



**


昨日のこと。


「おはようございます」


体調不良で休んでいた平尾さんが出勤。

正直あてにはしていなかったが、初芽が応援で他店に行ってしまった今日は人が足りない。

こんなやつでも、いないよりはマシだと思い、俺はいつものように挨拶を返した。

その後長井が出勤してきて、通常通り営業時間が始まった。


今日はこの三人か。


初芽がいないと、途端に店の中から華やかさがなくなる。

寂しい……というよりも、何かが足りない。そんな感じだった。

明日は休みだし、メシでも誘ってみるか。

そんなことを思った後、客足が途切れた間に裏で書類を作成していると、突然業務連絡用の店の携帯が鳴った。地区長だ。


「はい、八幡店矢崎です」

『ああ矢崎くん。ちょうど良かった。実は、今日正式に辞令が出てね』


辞令。その単語を聞いた途端、体に緊張が走る。


『愛知じゃなくて、北京に行ってくれないかな』

「は……?」


地区長、今何て言った?俺の聞き間違いか?


『は?じゃなくて。北京支店の立ち上げリーダーとして、向こうに行ってくれって言ってるんだよ』


北京支店を作る計画があるのは知っていた。

だから、地区長試験の面接で中国語が出るなんていう噂もあり、徹夜で勉強をしたこともある。

けれど結局、面接で中国語なんて出なかったし、今までなんの話もなかったから、そっちの話は他のやつに回されたのだろうと思っていた。