「お疲れ。さすが、矢崎チルドレンだね」
「なんですか、それ」
「長井もだけどさ、あいつに育てられた社員は、頑張って接客して、いいもん売ってくれるんだよ」
「それは、そうしないと矢崎店長が怖いからです」
「あはは、そうか!」
あいつは頭が固いしスパルタだもんなあ、と気さくな店長は笑った。
ほんと、最初はディス、イズ、スパールター!!(ふろむ『300〈スリー・ハンドレッド〉』)だと思ったもん。ジェラルド・バトラー並に叫びそうだったもん。
その後もパソコン入力をしながら適度に出ていって接客をし、気づけばお昼になっていた。
ここでは店長が一番先にお昼に行くのが習慣らしく、私と山田さんが売り場に残される。
「よし、終わった!」
お昼時はお客様が少ない。
その間にパソコン入力を終え、DMに貼る宛名シールを出力した。
それを貼ろうとしたら、裏のスペースが散らかっていてあまりにも狭かったので、表のカウンターを借りることに。
すると自然、仕入れ伝票のチェックを(まだ)していた山田さんと隣あわせになってしまう。
さきほど無視されたので、もうこちらからチヤホヤしてやることもないわと思い、黙って宛名シールを貼りだした。
すると、突然店の電話が鳴る。
他の店の電話に勝手に出るわけにはいかないなと思っていると、山田さんがスタスタと歩き、受話器を取ってくれた。
ホッとしたのもつかの間……。



