ご主人にメガネを返し、さらっと言って少し離れる。
楽しい買い物の邪魔をしてはいけないものね。
近くでフレームを拭くフリをして立っていると、やがて奥様から声をかけられた。
「あのう、これをください」
「はい、ありがとうございます!」
おお、ブランドもののサングラス!
視力検査もしないで3万円ももらえる。楽だわ~、サングラス。好きだわ~、サングラス。
「ご主人さまもおそろいでいかがですか?」
「いやー、今日はこいつの誕生日なんで。また俺の誕生日に出直します」
「わあ、おめでとうございます。優しいご主人様で、うらやましいです」
ほんと、うらやましい。
会計の前に専用のケースを出してもらおうと店長に頼むと、彼はそれを取り出しながら、笑顔で囁いた。
「二本買ってもらえるなら、安い方を2割引にしていいよ」
……ってことは、二本売れってことなのね。
売り場に戻り、その旨を伝えると、奥様がノリノリに。
「今度ドライブに行く予定があるじゃない。そのときにつけようよ」
「いいですね。こちらのレンズは車の照り返す光も抑えてくれるんです。ドライブに最適ですよ」
「いや、まあ、そりゃかっこいいし欲しいけどさ……」
ご主人は慎重で節約家らしい。
「今なら2割引きなんだよ!」
なぜか奥様が乗り気で、私より強烈にすすめてくれたため、なんとか二本購入してくれることに。
店長も出てきて一本かけ具合の調整を手伝ってくれ、ご夫婦は笑顔で手を繋いで帰っていった。



