「じゃあ、俺にしておくか」
「……え?」
茶色の瞳が、私をのぞきこむ。
その明るい色の瞳と目が合うと、途端に心臓が激しく振動しはじめた。
俺にしとくかって、それって……。
「ハツ。俺と、つきあえ」
どうして、命令口調──?
そう頭の片隅で思いながらも、矢崎店長の口から出たセリフが信じられなくて、コンタクトが落ちそうなくらい、目を見開いてしまった。
「嫌か」
「いっ、嫌じゃありません。嫌なら、お休みの日に二人で会おうとなんか、しません」
声が震えた。
けど、ここで素直にならずして、いつなるというの。
「私、店長のこと……」
上ずる声で必死に気持ちを伝えようとする。
けれど、矢崎店長の人差し指が、私の唇を封印するように、そっと当てられた。
「……わかってる」
微かに微笑む端正な顔が、茜色に染まっていた。
「バレバレなんだよ、お前は。出会った時と今とじゃ、態度が違いすぎる」
「はわわわ……」
たしかに、自分でも恥ずかしいくらい、手のひらを返したようというか、変わり身が早すぎると言うか……。
「まあ、そんな小娘に引っかかっちまった俺も俺だよな」
というか、矢崎店長はなぜ私とつきあおうなどと思ったんだろう?
引っかかっちまったってことは、私のこと、好いてくれているってことだよね?
「あの、店長……」
「その“店長”っての、二人のときはやめないか」
「はいっ?」
色々聞きたいことがあるのに、矢崎店長は終始自分のペースで会話を進めていく。



