「大久保がどうしてようと、関係ない。それより、あいつは平尾さんと繋がってるんだ」
そんな、麻薬の売人と元締めみたいに。
「俺と一緒にいたのがお前だと知れたら、まためんどくさいことになるぞ」
「そうかも。あることないこと言いふらしそう……」
そこまで悪人かつ暇人だとは思いたくないけれど、接客はしないのに売上改ざんをするくらいはやってのける人だ。
しかも、ふられた菜穂さんと仲が良かったらしいし、また風当たりが強くなりそう。
思わずため息をつく。気づけば、自宅はもうすぐそこだ。
「まあ、仕方ねえな。あんな人の多いところにいれば、他の店の社員に見られてる可能性もあるし」
「ですね……」
じゃあ、どうして私を誘ったの?
買い物と調査だけならば、店長一人でも良かったはず。
「ハツ」
名前を呼ばれて、直視できずに伏せていた目を開ける。
見上げれば、矢崎店長がじっとこちらを見ていた。
気づけば周囲は茜色に染まっていて、車は自宅アパートの駐車場の隅に停まっていた。
「例の占い師の、運命の人は見つかったか?」
は?どうして今そんな話?
「……いいえ」
それはズバリあなたでしょう!なんて、恐ろしくて冗談でも言えない。
首を横に振ると、運転席の店長がそっと口を開いた。



