「昼も夜も頭から離れずに、思うだけで胸が苦しく呼吸も乱れてしまうほど恋い焦がれて、あなたなくしては生きていけない、私の全てたる人は?」
涙流しても、口元が綻ぶ。
「私の愛する人は、そこにいますか」
想像するだけで、苦しくも、喜ばしくもなる彼はーー
「ここにいるよ」
そこに、いた。
扉向こうの彼に飛びつく。
倒れた彼に構わず、口付けをした。
「雨音に床ドンされるとは、思わなかったよ」
苦笑する口もとに、更なる追撃。
息継ぎすることなく、させず、思うがままに行動した。
ーーで。
「なんで、いるので!?」
冷静になった。
私の下敷きになる彼。よくよく見れば、脇に松葉杖が横たわっていた。
「退院の手続きして、タクシーで帰ってきた。メリーさんごっこしようと思ったのだけど、雨音のスマホに繋がらなくてね」
彼の体から退けようと思ったが、そのままでと背中に手を回された。
「もう、二週間経ちましたか」
「経ったよ。少なくとも、俺の中では。二週間ぶりの再会だ」
だから、離れたくないと彼は言う。
「雨音も、二週間経ったんじゃない?」
「……、右足治ってないのに。無理しないで下さい」
「病院よりも、雨音のそばにいる方が治りが早いと思って。先生が言うには、絶対安静。後は自己責任で」
先生から見放されるほど、ごねたのか……。
「右足なくなったら、どうするので?」
「どうしようねぇ。先のことよりも、今のことの方が大事だから。まあ、その時が来たら考えればいいんじゃない?」
「計画性ない男性は、モテないんですよ」
「そんな俺を好きでいてくれる君がいるから、構わない」
嫌いにならないでね?と言う彼の目元も、ほんのりと腫れている気がした。
どうしようもない二人だと思った。
「情けなさすぎです」
「お揃いでいいんじゃない?」
「泣いてません」
「分かった分かった」
彼の優しさに甘える。
彼のせいにして、思う存分甘える。
彼もまた、私を愛してくれているようにーー


