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右足骨折しても、歩き出そうとする彼を病院に残し、部屋に戻ってきた。
看護師さんから貰った入院時に必要な物リストとにらめっこしながら、今の私が持てる分だけの量を用意する。
よくよく考えれば、毎日お見舞いに行くんだ。着替えを何週間分も持っていかなくていいだろう。
「タオルに、歯ブラシに、着替えに、常備薬……は、ないか」
雨音が、俺にとっての常備薬だ。と、ドヤ顔する彼が思い浮かんだので、もみ消しておく。
「よし。足りない物は持って行ってから聞こう」
ボストンバッグに詰めた荷物を担ぐ。
なかなかの重量だ。タオルを二枚ぐらい抜きたい……。
一人ファイト一発していれば、インターホンが鳴った。
返事をし、玄関先まで行ってみる。
どなたですか?と言う前。
「あ、雨ねえさん!ご無沙汰っす!先輩から頼まれて、ええと、『ココアいる?』」
「は?」
「じゃなかった!えーと、ええと、『ここに行く』『ココス行く』……?」
「……」
閃いた。
部屋に戻って、一枚のメモを持ってくる。
「『昼も夜も頭から離れずに、思うだけで胸が苦しく呼吸も乱れてしまうほど恋い焦がれて、あなたなくしては生きていけない、私の全てたる人は?』」
「そうっす!それ!『ここにいるよ』だ!」
「はい、いらっしゃい」
※だって雇用主がやれと言うから。


