最初から
彼が私を
好きなわけなかったんだ。

罪悪感だけしか
私たちの間には生まれなかった。

高校を辞め、
専業主婦になった。

彼の帰りを黙って待ってられなかった。
店に押しかけ、
少し話した女にだって詰め寄った。

私は、
彼が私に優しくする度に、
目が合う度に、
胸が締め付けられ、
一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど
彼を束縛した。


「君は、世界で一番美しいよ。」

離婚届を渡したのは私だった。
彼は私にそう言って、笑った。


幼くて方法が分からなかった。


私はその後、父がいるパリに行き、
父の知り合いのエージェントに
誘われ、モデルの仕事を始めた。

毎日が、
彼の作るお菓子のようにキラキラ輝いて、甘い香りを放った。


だけど、
それは、彼の作るお菓子じゃない。


見た目だけの
くだらない偽物。
空っぽの箱。