私の悲惨な恋。




「俊!あれ聞いたか?」



「あれって何だよ?そんな風に言われてもわかんねえよ」






修学旅行が終わって、また普通の日に戻った月曜日。



男子とじゃれあう斉藤くんを見てまたかっこいいなって思う。






「ええっ!?その態度だとまだ聞いてないんだー!」



「だから何の話だよ?」



「よーく聞いとけよ!」






そう言って斉藤くんの友達が取り出したのはスマホだった。



何が始まるんだろう?



それにこの会話を聞いてる何人かの人がこっちをちらちら見てる気がする。



嫌な予感がするんだけど……






『好きな人、いるよ……。……斉藤くん。かっこいいし優しいし面白そうだし――』






スマホから聞こえてきたのは、まぎれもなく私の声で、私が修学旅行の時にしゃべったことだった。



どうして……?



まさか……あの時誰かが録音してたの?



最初からこれが目的で、私を話の輪に入れたの?



いやだ。



恥ずかしいじゃん。



それに遠藤さん達にだまされたんだ……。






「ま、マジかよ……。これって鈴木の声だよな?」



「ああ、そうだぜ」





斉藤くんがこっちを見てきた。



なんていうんだろう……。



少し期待して斉藤くんの次の言葉を待った。



いい結果じゃないにしろ、少しは私の事かばってくれるかも……。






「ありえねえ……。あんな汚い奴に告られるとか。最悪」






う、うそ?



そんなひどい言い方ってないよね?



そう思って、私は斉藤くんの方を見た。



斉藤くんの目は何か汚いものを見るような目だった。



そしてその目は私の方に向けられていた。






「はははっ!最高~!俊」



「女子にあんな言い方ひどすぎー!って、あいつ女子じゃないか!はははっ」






教室に笑い声がこだました。