彼があたしを抱くとき


「絵をかくの好き?」

自分でも予想しなかった質問が、口から出てきた。

「まぁな、高校の時も芸術科は美術の選択だったし、大学じゃ第二文学部美術史専攻にもデッサン実技はある」

「西洋美術史?」

「まだ、わかんない。三年からだから。油を始めたいと、考えてんだ」

「どうして、描くの」

「俺が生きている、俺が存在してるって言えるのは、絵しかないんだ。描いた絵は俺の唯一の財産なんだ」

「おもしろい」

「まぁな。才能は無いらしいけどね」