―母として妻として―


先生が話してくれた。

長谷川先生のこと。




こうして今になると、何をあんなに不安になっていたんだろうと思う。



でも、その時は……
どんどん不安になって、想像が真実かのような気がして、怖くなる。

そうして想像しちゃう自分もイヤになるけど、それが私だからどうしようもない。



先生が言った。

「こうしていつも俺達は何でも話してきたのに、今回はどうして言えなかったんだろう」



それは私に原因がある。

話していてそれを感じた。



先生は話そうか迷っていたはず。

私にもっと余裕があれば……


私は初めての子育てに夢中で、必死で。

楽しくて仕方がない反面、とても疲れてもいて。


こうしたい、ああしたい、と理想の子育てを追い求めている。



それがだんだんストレスにもなっていて、先生はそのことに気付いていた。


空は、いろんなものに興味があって、目に入るものすべてが気になる。
そして、スポーツもなんでもやりたがり、やらせるとどれも上手。
同じサッカークラブの友達のママに誘われて行ったダンスでも、空はやっぱりひとりだけ上手だった。

どれも続けさせたいと思ってしまう。

ダンスを始めればダンサーになれるんじゃないかと思うし、
かけっこも速いから陸上選手になれるんじゃないかと思う。

今習っているサッカーとスイミングでも、周りから嫉妬されるくらい才能があるように見える。

これは親バカだからってのもあるんだけど、やっぱり先生の遺伝子、だよね。

運動神経だけじゃなくて、先生の教師としてのそういう人をまとめる力とかカリスマ性のようなものも、空にはある気がしてる。