長谷川先生は、他に話せる相手がいないと言った。

でも、そんなの嘘だ。


俺に話すより、女友達に話す方が絶対に共感してくれるはずだ。




今、俺はきっと長谷川先生を突き放さないといけない。

迷惑だ、メールも送らないでくれ、仕事以外で関わらないでくれ、と……

言うべきなんだ。



だけど、やつれきった精神的にも追い詰められた長谷川先生をこれ以上どん底に落とすことができない。




午後の授業がなかったので、俺はひとりで部活の練習計画と顧問の割り当てを作っていた。


校庭が見えるこの教官室は、俺の大好きな場所。

直を感じられる場所。



直、ここに座ってたな。

マウスいじってたな。

オレンジジュースこぼしたな。



直、高校生の直が今ここにいたら、どう言ってくれるかな。


あぁ、相当俺も限界だな。
こういうこと考える時って、追い詰められている時。


直が走ってこないかな~とか

どこかに直いないかな~とか。


そんなこと考えてる今の俺も、もう疲れてるんだろう。



100%の力を子供たちに注ぎたいのに。




その日の放課後、直ではないが、懐かしい生徒が俺の元を訪ねてきた。

それは、懐かしく、甘酸っぱいような不思議な再会で、あの頃の気持ちを思い出させてくれた。