「夫婦って鏡みたいなもんじゃない?」


ゆかりは、真面目な顔で私を見つめながら言った。

瞬きも忘れて、私は考えた。


「直自身が、先生に対して何か感じてるんじゃないの?だから、自分もそう思われてるのかなって思ったり」

「今も、先生はかっこいいし、大好きだよ。でも……」

「でも?」


ゆかりは、何でもお見通し。


「寂しいってのはある。それに、他の人を素敵だなって思ったことはある」

「それ、やばい!今までの直にそんなことあった?」

と言ったあとに、空を産む前に会社での出来事を思い出した。


「あ、直、前にもいたね」

「もう、その話、忘れて~」

「あははは。女ってそういうもんだよ。私だってたっくん好きだけど、いろんな人が気になるもん」


ケラケラと笑ってくれたゆかり。

私のハニードーナツを一口ちょうだいと言って、食べた。



先生は、私の初恋の人。

この人以上に好きになる相手なんていないと思ってる。


教師である先生を理解しているはずなのに、学校のことで空の試合に来られないことが続くと、イライラしちゃう。

旦那さんとしては完璧でも、パパとしては……

もっと一緒にいたいと思ってしまう。

そういう不満がたまってきているのかもしれないな。



「順番なんてつけるものではないけど、今の直にとっては空が一番なんだよ」

「それはそうかもしれない」


空が生まれて、確かに気持ちに変化はあった。



「直、女って強くなるんだよ」

「うん、そうだよね」

「私、妊娠したの」









突然の重大発表に、ドーナツのどに詰まらせるかと思った。



「本気で?ゆかり、本当?」

「でかした、たっくん」

「おめでとう!!」