嵐は、その子に謝りに行くと決めた。
その後どうするかはまた相談しに来ると。
たかがキス、じゃない。
お互い好き同士でないキスなんて、最悪だ。
自分を好きな女の子だから許してくれるだろう、という考えが続くと、
いつかレイプしてしまうかもしれない。
今、ちゃんとしないと。
嵐のこと、ちゃんとしっかり見ていこうと思う。
アイツがちゃんと、ひとりの女性を大事にできるようになるまで、
俺がそばで見守る。
せっかくいいヤツなのに……
だめだよ、絶対に。
その女の子にとって、ファーストキスだったかもしれない。
今後、誰かとキスをするたびに、辛いキスの記憶がよみがえる。
女性を低く見ている証拠。
今後、クラスでも、授業でも、しっかり話していかないといけない問題だと思った。
もう、長谷川先生のことなんて、頭から消えていた。
やっぱり俺は教師だな。
生徒のことで頭がいっぱい。
だってさ、これから大きく羽ばたく高校生のそばにいられるって最高にありがたいこと。
毎日が新鮮だし、勉強だし、青春で。
「おかえり」
「直、俺、やっぱ教師って仕事が好きだなって思う」
「どうしたの~?熱い先生だぁ~」
「生徒と向き合うと、俺自身もいつも成長させてもらえる気がする」
意味もわからず、直は俺を見つめている。
「そういう熱い先生、すっごい好き!!」
その夜、嵐との話を直に報告し、熱い議論を繰り広げた。
直も熱い。
だから、面白い。
いつもありがとう。
【先生SIDE END】