【都合のいい日、飲みに行きません?】


その日の夕方、まだ校内にいる時間に、メッセージが届く。

長谷川先生からだった。


【いいっすね~!体育部みんなでパーっと行きましょう】

【できれば、ふたりがいいんですが。ご迷惑ならあきらめます】




俺の作ろうとした壁をすぐに壊される。




【ストレスためすぎないようにしてください。機会があればまた】


【新垣先生だけにしか言えないので】





高校は生徒が成長する場所で。

教師同士がこんなことで悩んでる場合じゃないんだけど、教師もまた人間で……




いつか、あったな。

教育実習に来た学生が告白してきたってことが……


あの時、胃が痛くなる日々だったっけな。





相手は既婚者、俺の勘違いであって欲しい。




残念ながら、既婚者でも恋愛をするってタイプの人がいて、教師をしていてそういう同僚を何度も見てきた。

あとは、生徒のご両親のそういう問題も見てきた。


生徒が泣きながら俺に相談してくれたこともあった。


部活の顧問と自分の母親が不倫、ってこともあった。



みんながみんな、自分と同じ考えではない。

それは理解しているけど、悲しい気持ちになる。



俺は、断言できる。


直以外に、恋愛感情は抱かない。

直以外と何がかがあるってことはない。



でも、それを何度言っても

それで相手が安心するってことはないんだよな。




昼休みの校庭を見つめながら、

いろんな感情がぐるぐるとまとまらないまま……



「新垣先生、ちょっといいですか」


振り向くと、嵐が立っていた。


「どうした?」


「俺、嫌がってる相手に無理やりキスしてしまったんだけど、これって犯罪?」



また大きな問題がやってきた。