「どんなワッフル食べたの?」


遠回しなこんな聞き方も、嫌。



「普通の生クリームが乗ってる感じ。前に直と空と食べたワッフルと全然違ったよ。あのワッフルはすごかったもんな。アイスの二段乗せにフルーツもな。空も完食したよな~」


口数が多い。

ずっと先生を見ているからわかる。

何かあった。

私に言えないこと?

でも、それならワッフルを食べたことも内緒にすればいいのに。



「遂に俺も来年あたり、転勤するかもしれない」


唇のケチャップをなめた先生が神妙な顔つきでそう言った。

私は、変な勘ぐりをしていた自分が情けなくなった。


「そうなの?」


「さすがにもう長いからな。でも、陸上部から離れるのが辛いな……」


「先生が別の高校に行っちゃうって信じられないな」


思い出のあの校舎。

ふたりの始まりの場所から先生がいなくなるなんて。



「まだ決定じゃないけど、そろそろだよなって話をしてて」


「先生が一番長いくらいだもんね」


「ああ、できればずっと今のままがいいけど。次に俺が行くとしたら相当荒れてる高校だろうって言われたよ。生徒が教師をなめてるって問題になってて、怖い教師ってのがいなくなってる。もう俺もそんな若くないから、怒鳴るのも疲れるよ……」



先生はいつも、そうだった。

始業式、終業式、体育祭。

全校生徒が集まる場所では、生徒の間をぐるぐる歩いて、注意して。

先生の大きな怒鳴り声が遠くから聞こえてくることがあった。


思ったんだよね。

先生、つらそうって。

生徒に対して、叱ったりしてる先生はとても悲しそうに見えた。


先生は、生徒と楽しく話して笑ってるのが似合う。

でも、求められるのは、怖い先生。



「ふ~、風呂入ってくる」


先生は、眠そうにあくびをしてお風呂へ向かった。