手が伸びる。


私の頭の上に乗せられた手は、ポンポンと弾む。



「直は何も悪くない。何も間違っていない。今置かれている環境と、周りの人の満たされない気持ちのせいだ。家庭環境も円満じゃないのかもしれないし、夫に不満があったり、子供に不満があったり……」


「うん、ありがとう」


ぷにっとつままれたほっぺのお肉。


「もっと食べて太ればいいんじゃない?」


と先生は笑った。




「俺がこんなこと言うのはどうかと思うけど、サッカーにいたママ達みんな、小太りだったしな。はは。直みたいにかわいいママがうらやましいんだよ」


「ふふ。旦那さんもこんなにかっこいいし」


「ラブラブ感が、伝わってしまったのかもしれないなぁ」



先生は、これからはなるべく直に触れないようにしなきゃと笑った。




「かわいい妻を持つって、俺にとってもなかなかのドキドキなんだぞぉ?」



食後のコーヒーを淹れ終えた私に、先生が言った。


「どういうこと?」


「わかんねぇの?サッカーのコーチとか、塾の先生、学校の先生、部活の顧問、これから直が出会ういろんな男性は、みんな俺のライバルだってこと」


「何よ、それ~!!」


「俺は興味ないけど、高校の先生の中にもいるよ。あの子のお母さんが美人だとか、色っぽいだとかそんな話をしてる」


教師もコーチも、職業を離れたら普通の男ってことか。


それは女性も同じで、現実にママ達はコーチのことをそういう目で見ているんだもんね。