私みたいにやきもちをやいちゃう人は、先生のような人と結婚すべきじゃないのかもしれない。
かっこいいでしょ?!って自慢できるくらい大きな心を持たないとやってけない。
試練はすぐにやってきた。
次の週の土曜日のこと。
練習試合があって、部活から早めに帰った先生が駆けつけてくれた。
「遅くなってごめん!間に合ったぁ~」
白いジャージ姿の先生の手が、子供達を応援しているママ達の中の私の背中に触れた。
「あ」
私は先生の顔を見る前に、周りのママ達の視線を気にしてしまった。
一番よくしゃべるボス的ママが、すぐに発した言葉。
「空君パパ、超イケメン!!」
他のママも子供そっちのけで、先生のことを見て、話していた。
そんな深い意味はないってわかってる。
みんな既婚者だし、母親なんだしね。
でも、こういうとき、複雑な気持ちになる。
高校のころ、私の彼氏なのにみんなが先生をかっこいいかっこいいって言ってた記憶がよみがえる。
体育祭で応援団をした先生のあのかっこいい姿。
みんながキャーキャー言ってて、私はかっこいい先生の姿よりもその周りの女子たちのことばかり気にしていたなって。
「どう、空。今、勝ってる?」
先生は、私の右に座り、大きな声で空に声をかける。
「空~!もっと走れ」
よく通る声。
全校集会でも一番よく聞こえる先生の声。
廊下の端まで聞こえる声。
隣にいるのに、なんだか遠くに感じてしまう。
バカな直。
バカな、ママ。
ごめん、空。
ごめん、先生。


