空が習い事をしたり、学校へ行くと、そこで男性と親しくなることは必然で。
そんなことに嫉妬なんかしちゃいけないに決まってるし、お互いにそんなことはありえないんだけど。
「コーチ、どんな人だった?」
あくまでもさりげなく訊いてみるが、心臓がどきどきしていた。
「若いのにしっかりしたコーチで、空のこと足が速くて、サッカーに向いてるって言ってくれたんだ!」
「お、そうかそうか。俺も今度、一緒に見学しようかな」
俺は、父親として未熟なんじゃないかと思ってしまったよ。
本当に・・・・・・
まぁ、どうしてここまで心配しちゃうかって言うと、夕食時に何度かサッカーのコーチから電話がかかってきたことがあった。
一度目は、体験の感想を聞く電話。
二度目は、次の持ち物。
嬉しそうに話す直を見て、なんだか不安になった。
直は、空の成長が嬉しいだけなんだ。
わかってんのにな。
喜多先生は、俺がその話をしたらいじわるなことを言ってきたっけ。
『サッカーのコーチとママの不倫って多いらしいよ』って。
「どうしたの?」
直に声をかけられて、俺は水道の水を止める。
「いや、なんでもない。すぐ行くよ」
こうして改めて思う。
直は、こんな思いを何十回してきたんだろう。
いや、今だってそうかもしれない。
教師をしていることで、余計な心配をさせてるんだよな。
直が思ってる程、もう俺はモテないし、奥さん命だってことをからかわれるくらいなのに。
テーブルには、俺の大好きなチキン南蛮と空の好きなコーンスープが用意されていた。


