先生は体育の先生だった。

背の高い先生は、高校では怖い先生っていう位置で。

怖い声を出すくせに、笑顔はとっても優しくてね。


生徒から人気があった。


当時の私の名前。


「おい、矢沢」


矢沢直。


名前を覚えてもらえた。


嬉しくて嬉しくて、涙が溢れた。


こんな恋は初めてだったし、これからもこんなに誰かを好きになったりしないって思った。

思えば、まだまだ16歳の幼い少女だったのに。


人生の全てをわかったような気がしていた。


好きってこと。

大事ってこと。

思いやるってこと。


先生を好きになって、本当に自分が変わっていくのがわかったんだ。


桜の季節が終わると、毎年キュンとする。


先生の長袖が半袖になる。

腕だぁ~!って喜んじゃう私。



真夏の真っ黒な先生も大好きで。

でも、秋になると少し白くなる。


そんな変化が楽しくて、嬉しいのに、なぜか苦しくて、泣きたくなることもあった。


いつか終わる。

それはわかってた。



教師と生徒。

高校3年間の恋。


わかってんのに、どんどん好きになって、どんどん私は先生なしでは生きられないって思うようになっていた。