白いジャージリターンズ~先生と私と空~

翌日の朝。

廊下を歩いて探したが、あの子には会えなかった。

―ガチャ

ドンドン。

体育教官室に誰かが来た。

「新垣先生、いますか~」

声だけで誰であるかはわかる存在。

「朝練、今日ないのに早いな」

「あ~、朝から治安悪くて」

作り笑顔の奥には、寂しさも感じられる。

俺に会いに来たのは嵐だった。

「家庭内の治安?」

「離婚すんのかなってくらい」


嵐の母親は、俺の学生時代の彼女だった。

最初は俺に対して敵対心をむきだしにしていた嵐だったが、最近はいろんな話をしてくれる。


「家庭の空気が悪いと、居心地悪いな」

「悪いなんてもんじゃないよ。朝からうるさいからコンビニ飯」

手に持っていたビニール袋から、ペットボトルのお茶とコーヒーを出した。

「はい、これ俺のおごり」

嵐は、俺の机にコーヒーを置いて、堂々と隣の席に座った。

「おう、サンキュ。でも、金払うよ」

「いいのいいの。今度もっといいもんおごって」


サッカー部に入ると決めていた嵐が、俺の一言で陸上部に入部してくれた。

それは、密かな親孝行だと言っていた。

嵐は、俺とお母さんを会わせたいのか。

お母さんがそれで、変わってくれたら、と願っているのか。

どんな顔をして会えばいいのかわからないが、卒業までにきっと話す機会はあるだろう。