朝の校舎 【先生目線】


早朝の学校が好きだ。

静かな夜を過ごした校舎や校庭が、ウキウキしながらみんなを待っているような気がする。

だんだんとにぎやかになっていく感じが好き。


俺は、学校が好きで、大人になろうとしている高校生の子供達が好きなんだよな。

中学生ともまた違う、ちょっと大人になりかけている感じ。

悩んだり、迷ったり、不安を抱えたりしている中で、楽しいことを見つけて笑ってる生徒がたまらなく、大事だなと思う。

笑ってるから幸せ、ではないってこと、それは直が教えてくれた。


助けて、と言えない子もたくさんいる。



「新垣先生、こんなに朝早くから何してるんですか」

誰もいないと思っていたので、声に驚いた。

「お、おはよう。早いな」

まだ部活が始まる時間でもないのに、ひとりの女子生徒が後ろから声をかけてきた。

静かな廊下に響く声。

「家にいてもしんどいから、もう学校にきた方がましかな~って」

「何かあったのか」

「ん~、別に。大丈夫です」

「大丈夫っていうヤツは大丈夫じゃないんだよ。無理すんな」

「ま~、私の人生っていつもこんな感じなんで、別に慣れてて」


あきらめたようなその表情は、別の生徒で過去に何度も見たことがある。

家庭に問題のある生徒……


「俺、いつでも暇してるから何でも話しに来いよ。口、軽くないから安心して」

「はは、ありがとうございます。口軽くないっていう人は軽いんですよ」

「うわ~、ひどいなぁ。信じてくれよ」

「冗談ですよ。ふふ」