「直、お弁当とかも手抜きでいいんだからね。キャラ弁とかいらないから」

「あっははは。バレてる」

「空なんて、お腹減ってバクバク一瞬で食べるんだから、サッカーボールの模様のおにぎりとかいらないから!」


お腹を抱えて笑ってしまった。

ゆかりにはお見通し。

「私も赤ちゃん生まれたら、いろいろやりたくなっちゃうけどさ~、直のこと見てるから、私は適当にやるって決めたの。だってさ、あんなに完璧な夫がいても、子育てってキツいわけでしょ。我が家のアイツは……先生に比べたらねぇ」

なんだかんだで、仲良しなふたりをずっと見てきて、思う。

このふたりをくっつけた神様ってすごいなって。


たっくんのダメなとこをちゃんとわかった上で、うまく操縦してるゆかり。


「思いやりとか、気遣いとか先生の半分もないからねぇ。言わないとわからないし」

「言わないとわからないってのは先生も同じだって言ってた。わかってるようでわからないんだろうね、男の人。特に、赤ちゃんができると、ママはもうママになっちゃうもん」

「言わなきゃわからないってよく言うよね。でも、ふたりの子供なのにね」


先生は反省してた。
やっぱり、出産後、自分はサポートしようと思っていたって。

それは間違いだと。


ふたりで一緒に、迷いながら困りながらもがきながら、子育てしなきゃって。



「ママだって、初めてだからわかんないもんね。でも、私は自分が守らなきゃって必死に頑張ってた」

「直はそういう子だもん。私も早く気づいて助けてあげられたら良かったな。ごめんね」

ゆかりは優しい目をして、そう言ってくれた。

「ゆかりはいつも支えてくれてるよ」

会えなくても、離れてても、心の友はゆかりなんだ。

「直はつらいとき、つらいって言わないもん。それ、知ってるのに……」

「ゆかりは、先生と同じこと言うね」

「はは、先生に負けてられないからね~」



ゆかりは、時々お腹に手を当てていて、3人でお茶している気分になった。


早く会いたいね。
無事に生まれますように。
それが一番の願い。