「たっくんは元気?」

先生は、仕事で疲れた夜によくたっくんの話をする。

癒しの存在であり、教え子のように心配なんだろうな。

「喧嘩ばっかりしてるけど、元気。今しか遊べないって思ってんだよね。飲みに行って、私を怒らせる」

プーっと膨らませた頬が、高校時代と変わってない。

「それ、先生に話したら激怒だよ」

「でしょ」

「もうゆかりはこんなにお腹大きくて、いつ何があるかわからないのにね。お酒飲んでたら、車運転できないのに」

先生はそういうところは、満点の旦那さんだったな。
妊娠後期になってからは、一切お酒を飲まなかった気がする。


「先生も会いたがってるし、たっくんと4人で会おうよ」

「やっぱ、それだよね。新垣先生の保健体育の授業が必要だよね」


高校の教師である先生の先生姿を知っているゆかりとだから、話せることがたくさんある。

新しくできた友達には、言えない。


「直も元気そうで安心した。いろいろ大変だったね」

ゆかりは、手を伸ばし、私の手首をつかんだ。

「なんでも話してよ」

「もちろんだよ、ありがとう」

「直が直らしくいられるのが一番なんだよ。直は、すぐ頑張りすぎちゃうから」


心療内科の先生の言葉を思い出した。