「俺も知りたいよ。好きになっちゃダメって思ってそれで好きじゃなくなるなら、誰も悩まないよな」
「私ね、ただ好きでいたいだけなの。でも、友達には反対されるし、つらいだけだよって言われる。でも、私にとっては、好きでいられるだけで幸せなんだけど……」
「同じようなことを言ってたな、俺の奥さんも。反対されるのわかってたから誰にも言わずに好きだったって。でも、親友に話して、応援してもらえて……やっぱりそれは心強かったって」
教師を好きになるって、大事な友達であればあるほど、心配しちゃうと思う。
直は、誰にも言わず、静かに俺を好きでい続けてくれた。
中田に話すまで誰にも相談もせず、俺に告白するでもなく、俺を想っていてくれた。
「結婚してる相手ってことは、かなり年上なのか?」
「うん、結構年上。でも、それはどうでもいいの」
「結婚してる人を好きになるってことは、報われないってこと。それを承知で、好きでいたいんだよな?」
「そう、そうなんだけど、それってなかなかわかってもらえない」
「何も期待しないって難しいだろ」
「あきらめなきゃいけないって思ったら、つらくてつらくて。だから、好きでいていいって思えるだけで幸せなんだよね。残りの高校生活、ちゃんと好きでいたいの」
痛いくらいにわかる気持ちだった。
直と別れた時、同じこと思ってた。
結ばれなくてもいいから、好きでいたいと。それだけで、幸せだって。
「学校の先生なんだ、相手」
「うわ、そうか。俺に相談に来るくらいだから、そんな気もしたけど」
誰とは聞けないが、バスケ部顧問の先生の顔が浮かんだ。
「原田達も、あと少しだもんな。部活も、高校生活も……」
「後悔したくない。今は今しかないから、自分に嘘つきたくない」
「いいこと言うなぁ。そんなこと言われると、あきらめろなんて言えないよ。何も期待しない、できるだけ傷つかないように好きでいるっていうなら、それは止められないよ」
「じゃあ、卒業まで好きでいていいのかな」
「俺が、いいよって言うのも変だけど」
安心したような顔で笑った後、原田が俺を見て言った。
「良かった!!気持ちが楽になった」
「そっか。誰にも言えないなら、また俺に相談しに来ていいから」
「ありがと、先生。そんな優しくされちゃうと言いにくいんだけど、私の好きな人って、新垣先生なんだ。ごめんね」


