感謝してもしきれないコーチではあるんだけど……
しっかり直を見てなきゃ奪われるって、改めて……そう思った。
俺しか直を守れないってそんなこと思ってたけど、
彼なら、守れるかもしれないって危機感が生まれた。
直のことをわかっていて。
直の弱い部分もわかっていて……
悔しいけど、俺よりもわかっていることもあった。
俺を好きだと言ってくれる直だけど、それが一生続く保障はない。
俺が気を抜けば、彼に奪われる。
俺、しっかりしなきゃ。
しっかり、直の内面と向き合って、必死で守らないとって。
そう思わせてくれた存在だった。
「新垣先生、ちょっと相談いいですか」
バスケ部の練習着を着た女子生徒が体育教官室にやってきた。
「おう、どした?」
「ちょっと外で話せますか」
遠慮がちにそう言って、俺はその子と一緒に体育教官室を出た。
「ここでいいか」
俺がよく陸上部の練習を見渡す時に座る外の階段に腰掛けた。


