「ゆっくりだけど、俺のこと知ってもらって、友達になれたらって思ってる」

「嫌われてなくて良かったな。ほんとだったら、ぶん殴られてもおかしくない」

「先生、気付かせてくれてありがとう。あのままだったら、俺、最低な男になってたと思う。あの子のこと傷つけてたと思う。もう、好き同士じゃないと絶対にしない」


まっすぐな目を見ていると、もう嵐は大丈夫かなと安心できた。

でも、何度も何度も言わなきゃいけないこと。

自分でも考えないといけないこと。

好奇心とか、欲望とか、
そういうの、自分でコントロールできないといけない。



「じゃ、また練習でな!」

「はい」

茶色い髪を輝かせて、教官室を出ていく嵐。


直は、俺の為に……

ファーストキスを取っておいてくれた。


大事に大事に、俺にくれたんだ。




あの時、直はたっくんと付き合っていて……


車の中でキスされそうになって、ドアを勝手に開けて逃げてきた。


公衆電話から電話をくれた直を必死で探した寒い冬の夜。

クリスマスイブだった。



直は、どうしても初めてのキスを俺にって……

大事なもんなんだよ。


わかってはいたけど、直と付き合ってからそのことをもっと身に染みて感じるようになった。


直が気付かせてくれたことは多い。

直のおかげで、教師として成長できた部分もたくさんある。